高齢化が進む日本において、認知症などで判断能力が低下した人を支援するために**「法定成年後見制度」**があります。
しかし、実際に成年後見制度を利用した人の中には、後見人による財産の管理ミスや親族間の争いなど、さまざまなトラブルに巻き込まれるケースも増えています。
今回は、成年後見制度に関するよくあるトラブル事例と、トラブルを防ぐための対策について解説します。
1. 成年後見制度とは?基本をおさらい
まず、成年後見制度の基本を確認しましょう。
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人を法的に保護するための制度です。
成年後見制度には**「法定後見制度」と「任意後見制度」**の2種類があります。
🔹 法定成年後見制度(今回のテーマ)
- すでに判断能力が低下した人を支援する制度
- 家庭裁判所が後見人を選任
- 後見人は本人の財産管理や契約手続きを行う
🔹 任意後見制度
- 本人が元気なうちに、信頼できる人を後見人として指定できる制度
- 事前に契約を交わし、将来に備える
法定成年後見制度は、認知症が進行した後に利用されるケースが多く、家族の意向とは異なる後見人が選ばれることもあるため、トラブルにつながりやすいのが特徴です。
2. 成年後見制度に関する主なトラブル事例
成年後見制度を利用する際に発生しやすいトラブルについて、具体的に見ていきましょう。
① 後見人による財産管理のトラブル
成年後見制度では、家庭裁判所が後見人を選任しますが、選ばれた後見人が財産管理を適切に行わないケースがあります。
❌ よくある問題点
- 後見人が本人の財産を私的に流用する(横領・着服)
- 投資や高額な買い物を行い、財産を減らす
- 必要な支払い(施設費用・医療費など)を怠る
② 親族間の対立や不満
成年後見制度では、親族が後見人になるケースもあれば、専門家(弁護士・司法書士など)が選任されることもあります。
しかし、後見人に対して**「財産を勝手に使っているのでは?」**という疑念が生じたり、後見人の決定を巡って家族間で対立が起こることもあります。
❌ よくある問題点
- 兄弟姉妹で「誰が後見人をやるか」で揉める
- 親族が後見人になれず、不満が募る
- 後見人に不信感を抱き、家庭裁判所に異議申し立てをする
③ 後見人の解任が難しい
成年後見制度では、後見人を変更したい場合でも、裁判所の許可が必要です。
後見人に問題があると感じても、簡単に交代できないため、不適切な後見人が長期間財産を管理するリスクがあります。
❌ よくある問題点
- 後見人が親族とコミュニケーションを取らない
- 財産管理の不備があっても、解任手続きが長引く
3. 成年後見制度のトラブルを防ぐための対策
では、これらのトラブルを防ぐためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
① 可能な限り「任意後見制度」を活用する
法定後見制度では、家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも希望する人が選ばれるわけではありません。
そのため、判断能力があるうちに、信頼できる家族や知人と「任意後見契約」を結ぶのがベストです。
② 後見人を選ぶ際のポイントを知る
後見人を選ぶ際は、以下のポイントを押さえることが重要です。
✅ 財産管理の経験があるか(専門家を選ぶ場合は実績を確認)
✅ 本人の意思を尊重できる人か
✅ 家族間で合意が取れているか
③ 成年後見制度以外の選択肢を検討する
成年後見制度以外にも、以下のような選択肢があります。
✅ 家族信託を活用し、財産管理を家族に任せる
✅ 遺言書を作成し、財産の分配を明確にする
✅ 定期的に親族と話し合い、最適な方法を検討する
4. まとめ|成年後見制度は慎重に活用しよう
成年後見制度は、高齢者や判断能力が低下した人を守るために作られた制度ですが、後見人の財産管理ミスや親族間の争いがトラブルの原因となることもあります。
✅ 可能であれば「任意後見制度」を活用する
✅ 成年後見制度以外の選択肢(家族信託など)も検討する
「成年後見制度を利用するべきか迷っている」「適切な後見人選びに困っている」という方は、まずは行政書士に相談するのが安心です。
適切な対策を取ることで、老後のトラブルを未然に防ぎ、安心して過ごせる環境を整えましょう。
お問合せ⇒やまの行政書士事務所
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